一時払い外貨建終身保険の見える化(前編)

少し前に、平準払いの外貨建終身保険について解説しました。

(関連ブログのリンク)
外貨建終身保険の見える化(前半)
外貨建終身保険の見える化(後半)

今回は、一時払いの外貨建終身保険について解説します。内容は平準払いの時と同様に、積立利率と実質的な利回りの違い、為替リスクの見える化などについて触れた後、一時払い外貨建保険と同様な性質を有する金融商品との比較をしてみたいと思います。

1.一時払い外貨建終身保険の商品概要

それでは、まず一時払い外貨建終身保険の概要を確認しましょう。下の図をご覧ください。図は左から右に時間の経過を表していますが、いろいろな説明文があって分かりづらいと思います。まずは、図の中で赤丸をつけた3つの用語に注目して下さい。

基本保険金(一時払保険料):最初にまとめて支払う保険料のことです。米ドル建の保険であれば、通常は手持ちの円資金を米ドルに替えて支払います。

積立金一時払保険料から費用を控除した後、契約時に定められた積立利率によって複利運用されます。積立金は、時間の経過とともに増加していきます。

解約払戻金積立金に市場金利調整を適用して計算されます。解約時の市場金利が契約時より高ければ積立金を下回り、解約時の市場金利が契約時より低ければ積立金を上回ります。

そして、万一契約中に被保険者が亡くなった場合は、死亡時における上記3つの金額の内、一番大きい額が死亡保険金として支払われます。

 

2.積立利率と実質利回りの違い

外貨建保険の商品説明書をみると、「積立利率」という数値が大きく表示されており、「積立金は契約時の積立利率によって複利運用され、着実に増えていきます」というような説明があります。ある生命保険会社の商品説明書には、積立利率(米ドル建、12月1日現在)が下のように表示されています。

赤丸をつけた、3.47%という数字が目に飛び込んできますよね。円建の保険や金融商品では利率がゼロに近いので、これはとても魅力的に見えるのではないでしょうか。

でも、小さな字で書かれている説明書きをよく読んで下さい。積立利率というのは、積立金に適用する利率であると書かれています。そして、積立金は上で説明した通り、一時払い保険料から費用を控除した額なのです。

自分の払った保険料が、3.47%で運用されるわけではない、というところに注意して下さい。

この保険の場合、一時払い保険料から控除される費用は7%とされています(上の図の中に表記されていますね)。したがって、一時払い保険料が、87,497ドル(1千万円を1ドル=114.29円で換算)とすると、10年後の積立金(=解約返戻金)は以下のに計算されます。

通常、私たちは自分の払った保険料が何%で運用されるのかということに興味があり、それは積立利率より低くなります。しかし、積立利率が支払い保険料に適用されていると契約者が勘違いしているケースがあるのではないかと、金融庁は問題視しています。平準払いの外貨建保険で説明した通りです。

ちなみに、今回例として取り上げた保険会社の場合は、実質的な利回りも表示しており、契約者が誤解しないように配慮しているように感じます。

下の商品説明書の抜粋を見て下さい。赤い丸で囲んだ数値が、実質的な利回りです。表の下の注釈に「一時払い保険料に対する10年後の積立金額の利回りです」と書かれていますね。実際、表の下の計算式の通りに計算されています(計算式の結果がピタリと一致しないのは、利回りの小数点3位以下を切り捨てているためです)。

一時払い外貨建保険と他の金融商品を比較する時には、実質的な利回りを用いるように注意して下さい。

後編では、為替リスクの見える化と他の金融商品との比較について解説したいと思います。

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