資産取り崩しリスクの見える化
今日の日経電子版の記事で、老後資産の取り崩しに関するものがありました。
記事のリンク:老後資産は定率で引き出す 75歳以降は定額もあり
これについて、私の考えをお話ししてみたいと思います。
1.定率引き出しは現実的か
まず、記事の見出しにもある「定率引き出し」について考えてみましょう。
資産を運用しながら取り崩す場合、資産残高に対して一定率を乗じた額を毎年引き出す「定率引き出し」の方が、一定額を毎年引き出す「定額引き出し」よりも資産が枯渇してしまうリスクを抑えることができると、記事で解説されています。
理論的にはその通りだと思いますが、運用の巧拙による資産残高の増減によって引き出し額も増減してしまう、このやり方は現実的に有効でしょうか。
引き出したお金を、旅行や趣味に使うような場合であればいいかもしれませんが、日常の生活費の一部として使うような場合だと、定額引き出しの方が適していると思います。また、定額引き出しとはいっても、70歳台、80歳台、90歳台と年齢に応じて金額を減らしていくようなやり方も可能です。
このように、定率か定額のいずれの方法を用いるかは、引き出したお金の使用目的も考慮すべきでしょう。
2.資産取り崩しリスクの見える化
また、記事の中では、「膨大な回数のシミュレーションによって引き出し可能額を算出する方法」について触れられています。私は、以前のブログで、このような方法を「資産取り崩しリスクの見える化」と呼んで解説していますので、是非ご覧になって下さい。
ブログのリンク:日経マネーの取材を受けました!
実は、このブログのアクセス数は、あまり多くなかったんですよね。タイトルから、単なる自己PRの内容と見られたかなぁ、と反省しています。
ブログでは、資産1000万円を運用しながら毎月4万円の定額引き出しをした場合、運用の巧拙によって資産寿命がどの位変動するかを算出していますが、この他にも、例えば、定額でなく定率で引き出した場合に、引き出し額がどの位変動するかとか、毎月の引き出し額がずっと4万円ではなくて、年齢に応じて3万、2万などと減らしたらどうなるかなど、いろんなケースに対応できる手法です。
これは、老後資産の引き出しを検討する場合に、有用な情報を提供してくれる手法だと思います。金融機関のホームページでは、積み立て投資のための計算ツールを提供しているケースはよくありますが、引き出しのための計算ツールも提供して欲しいと思います。
3.WPPもお忘れなく
また、この記事では触れられていませんが、老後の生活資金の備えとしては、公的年金が柱であり、これを繰下げることによって増額することも選択肢の一つであることを、あらためて強調しておきます。
りそな銀行の谷内陽一氏が、今年の日本年金学会で発表したWPP(Work longer、Private pension、Public pension)のように、できるだけ長く働き、私的年金も活用して、繰下げ増額した公的年金を受給するというライフプランの検討もお忘れなく。
WPPについては、こちらのコラムで紹介されています。
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