ねんきん定期便の年金額が少なく感じる理由

先日、ある飲み会の場で年金のことが話題に上りました。

そこで、何人かの方から「ねんきん定期便で確認しているけど、年金の額って思っている以上に少ないよねー」という感想をお聞きしました。

その場では、それ以上あまり深い話はしませんでしたが、私としてはちょっと気にかかっていました。年金制度の趣旨やねんきん定期便の記載内容について誤解して、「年金制度はやっぱりあてにならない」と思われては、残念です。

ねんきん定期便に記載されている年金額が少ないと感じた理由は、おそらく以前のブログで解説したことではないかと思います。そこで、今回改めて説明をしてみましょう。

関連ブログ:ねんきんネットで老後の生活設計を

 

50歳を境に変わるねんきん定期便の見方

ポイントは、下の図の通り、50歳を境にねんきん定期便に記載される年金額の内容が変わるということです。

つまり、50歳前の方の場合は、それまでの加入実績のみに基づいて計算されているので金額が少なく感じられ、50歳以降の場合は、いわゆる代行部分が含まれていないので、厚生年金基金に加入歴のある方は金額が少なく感じられるという訳です。

厚生年金基金とは、大企業や複数の企業が集まって設立したもので、国の支給する報酬比例部分の一部を代行して支給し、さらにプラスアルファの給付をすることを目的としていましたが、バブル以降の運用難で財政が悪化する基金が続出したため、平成26年4月以降、解散するか企業年金への移行を促進する法改正がされています。

したがって、現在では基金の加入者は減少していますが、これから将来年金を受給しようとする人の中には基金の代行部分のある方も少なくないので注意が必要です。

以前のブログで解説した通り、ねんきんネットを活用すれば、これからの働き方や収入に応じた年金の見込み額が代行部分も含めて算出されるので、将来の生活設計に役立てることができるでしょう。

 

代行部分の注意点

しかし、代行部分がねんきんネットで表示されるのに、50歳以降のねんきん定期便では表示されないというのは、ちょっと不便ですよね。今後の改善が望まれます。

また、代行部分で注意が必要なことが一つあります。代行部分の支給は基金の規約によって定められいますが、働きながら年金を受給する場合に年金の一部または全額が支給停止となる在職老齢年金制度が適用されないケースもあるのです。つまり、就労によっていくら収入を得ても、代行部分の年金が支給停止とならないケースもあるのです。気になる方は、勤務先の厚生年金基金か企業年金連合会に確認した方が良いでしょう。

さらに、代行部分の確認と併せて、プラスアルファの加算部分の給付(3階部分に相当)についても確認しておくと良いでしょう。私も昔勤めていた会社の基金から結構まとまった金額の加算部分が支給されるということを最近発見しました。その会社を辞めてから20年も経っていて全く頭から離れていたのですが、企業年金連合会に電話で確認して分かった次第です。

今後、自分が老後に受給できる年金などが一元的に把握できるように、関係機関における連携を期待したいと思います。

 

年金が少なく感じるもう一つの理由

ところで、年金が少なく感じる理由がもう一つあります。それは、年金による所得の再分配機能のためです。

下の図をご覧ください。これは、2014年財政検証において出された、賃金水準と所得代替率を比較したものです。サラリーマンの年金は、定額の老齢基礎年金と現役時代の報酬額によって決められる老齢厚生年金の2階建てとなっていますが、定額部分があるために所得代替率は、賃金が高くなるほど低くなるように設計されています。

図の真ん中の赤い丸で囲った部分が、平均的ないわゆるモデル世帯の所得代替率を表しています。この数字はよくメディアでも使われているので、多くの人が、「所得代替率は現在60%のものが、将来は50%に低下する」という風に思っているかもしれません。

でも、賃金の高い人はそうではありません。図の右側の赤い丸で囲った部分を見て下さい。賃金が平均世帯より高くなると、所得代替率は低下していることが分ると思います。これは、年金の所得再分配機能といい、世の中の格差を是正するためのものです。

冒頭で「年金が少ない」とぼやいた方は、いずれも高収入の方で、月収が年金の保険料と年金額を算出する基礎となる標準報酬月額の上限である62万円を超えていました。そのため、自分の収入に対する年金額の割合が、巷で言われている平均世帯のものと比べてかなり低いと感じたのかもしれません。

 

さらに念のために付け加えると、現在平均世帯で月額22~23万円と言われている年金額は、専業主婦であった妻の老齢基礎年金(月額6.6万円程度)が含まれているので、夫自身の分は15~16万円になりますね。ねんきん定期便には、当然妻の年金額は含まれていないので、注意が必要です。

 

おまけ(年金広報に関して、、、)

最後におまけですが、今回のブログを書くために年金機構と企業年金連合会のホームページを利用しましたが、あれっ、と感じる部分がありました。

まず、ねんきん定期便の表示内容を確認するために、定期便に記載されている通り「ねんきん定期便 見方」で検索しましたが、これで検索上位に出てくるページは、何年も前の様式に関する説明で、最近送られてきた定期便の見方の説明には、全く役に立ちませんでした。

ねんきん定期便の見方(最新のページ):https://www.nenkin.go.jp/service/seidozenpan/20150601.html

また、企業年金連合会のホームページでは、トップページの「問い合わせ」からリンクしたページに記載されていた電話番号に電話を掛けたのですが、なかなかつながりませんでした。ところが、検索エンジンで検索していたら、チャットによる問い合わせができるページを発見し、またそのページには電話の待ち時間も表示されていました。しかし、残念ながらトップページからこのページにたどり着くルートは分かりませんでした。

企業年金連合会への問い合わせ:https://www.pfa.or.jp/nenkin_info/

先に述べた、年金情報の一元化と共に、年金に関して必要な情報に簡単にアクセスできるように、関係機関で検討を進めて欲しいと思います。

関連ブログ:年金広報に関する雑感

 

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