奨学金の貸与利率の最新動向と返還プランの検討

最近、私のブログでアクセス数が多いものに、「奨学金の利率算定方法を確認しよう」があります。

関連ブログのリンク:奨学金の利率算定方法を確認しよう

このブログでは、日本学生支援機構(JASSO)の奨学金について、その返還額に影響を与える貸与利率がどの様に決められ、二種類ある利率の決定方式(固定方式と見直し方式)のどちらを選択する方が良いのかということを説明しました。

おそらく、4月になって大学や専門学校を卒業し、社会人になる皆さんが奨学金の返還についての情報を求めてこのブログにたどり着いたのではないかと思います。

今回のブログでは、貸与利率に関する最新の情報と、これから奨学金の返還を始める皆さんの役に立つお話をさせて頂きたいと思います。

貸与利率の最新動向~利率固定方式の利率が低下

それでは、まず貸与利率の最新動向について確認しましょう。貸与利率には、固定方式と見直し方式の二種類がありますが、その違いについておさらいしましょう。

利率の算定方式 利率の具体的な適用方法 利率決定の基準となる市場金利
利率固定方式 貸与終了時に決定した利率が返還完了まで適用されます。
将来、市場金利が上昇した場合も、返還利率は変動しません。一方、市場金利が下降した場合も、返還利率は変動しません。
10年物国債の利回り
利率見直し方式 返還期間中、おおむね5年ごとに見直された利率が適用されます。
将来、市場金利が上昇した場合は、貸与終了時の利率より高い利率が適用されます。一方、市場金利が下降した場合は、貸与終了時の利率より低い利率が適用されます。
5年物国債の利回り

 

下のグラフは、今年3月までのそれぞれの方式による貸与利率と、利率を決定する基となる市場金利の推移を表したものです。ご覧の通り、利率固定方式は10年物国債の利回りに、利率見直し方式は5年物国債の利回りに連動していることが分りますが、JASSOは利率の具体的な決め方については公表しておらず、私の推測によるものであることをご了承ください。

利率固定方式(左のグラフ)は、昨年末からの10年物国債利回りの低下によって、2019年3月の利率は0.14%と1年半ぶりの低水準になりました。例えば、奨学金を毎月8万円、4年間借りた場合(貸与総額384万円)だと、半年前の利率(0.33%)では返還総額は397万円ですが、それが0.14%に低下したおかげで、返還総額は390万円と7万円少なくなっています。

利率見直し方式(右のグラフ)は、基準となる5年物国債の利回りが引き続きマイナスであるため、下限の0.01%で変わりません。上の例で、もし返還期間中(20年間)ずっと0.01%であれば、返還総額は384万4千円と利息がわずか4千円ですみます。まあ、これからもずっと5年物国債の利回りがマイナスという可能性は低いような気もしますが。

 

利率の算定方法はどちらを選択したらよいか

利率の算定方法の選択は、奨学金の申し込み時にするものですが、貸与期間が終了するまでは変更することができます。それぞれの利率の水準や基準となる国債の利回りの動向によって決めるといいのではないでしょうか。以下に5通りのシミュレーションで比較をしてみます。用いた事例は、毎月8万円の貸与を4年間受けたケース(貸与総額384万円)です。

利率固定方式の方は、直近の3月の利率0.14%と過去3年間で最も高い利率の0.33%の2通りで見てみました(表中のⒶ、Ⓑ)。両者の月々の返還額の差は300円程度ですが、それが20年間分貯まると総額で7万円の違いになります。先に述べた通り、12月末からの国債利回り低下によって、固定方式の利率は低下しました。今年の3月に卒業して貸与を終了した方にとっては、ラッキーと言えるのではないでしょうか。

利率見直し方式については、5年毎に利率が見直しされるので、シミュレーションは少々難しいです。利率見直し方式は、5年物国債の利回りに連動しているので、5年物国債の将来の変動を考えなければなりません。そこで、3通りのシナリオ(Ⓒ~Ⓔ)を用いてみました。シナリオの内容は、Ⓒ現在の国債利回りの期間構造(イールドカーブ)から算出される、5年後、10年後、15年後の5年物利回りを用いる、Ⓓ Ⓒよりやや金利上昇のスピードが早くなるケース、Ⓔ金利上昇のスピードがさらに速くなり、最後は上限の3%に達するようなケース、の3つです。

Ⓒのシナリオによると、総返還額は392万円で利率固定方式のⒶと近い金額になります。しかし、Ⓓ、Ⓔのように金利上昇のスピードが速くなるケースでは、総返済額がそれぞれ、401万円と420万円という風に増加してしまいます。

さて、シミュレーションの結果に基づいてポイントをまとめると、以下のような感じでしょうか。

  • 利率見直し方式を選択した場合、現在の市場環境に中立な結果であるⒸは、利率固定方式を選択した場合のⒶと返還総額はほぼ同じ。
  • 利率見直し方式は、Ⓓ、Ⓔのように金利の上昇スピードが速くなると、返還総額が増えてしまう。Ⓔは極端なシナリオなので、Ⓓを金利上昇が早くなった場合のリスクシナリオとして考えると、現在の利率固定方式を選んだ場合と比較して、11万円程返還総額が増えてしまう。
  • 現在のマイナス金利が15年後(利率見直し方式の最後の利率決定時期)まで継続する場合には、返還利率は現在と変わらず0.01%で、返還総額は384万円(利息はわずか4千円)と利率固定方式を選択した場合と比較して、返還総額が6万円程少なくなる。ただし、このようにマイナス金利という状況が今後もずっと継続する可能性は、低いのではないでしょうか。
  • 上の2つのポイントからすると、利率見直し方式を選んだ場合は、将来の金利変動によるダウンサイドのリスク(総返還額が11万円増加)の方がアップサイド(総返還額が6万円減少)よりも大きいのではないかと個人的には感じます。
  • ただし、利率見直し方式を選んで、シナリオⒺのような将来大幅な金利上昇が起きたとしても、毎月の返還額の増加は2500円程である。したがって、将来の金利変動によって返還が困難になるということはないので、現状においては利率の算定方法の選択については、あまり心配しすぎる必要はない。

 

返還にあたって留意すること

大学在学中4年間貸与を受けて、4月から社会人としてスタートした皆さんは、奨学金の返還が10月から始まります。ただ、今のうちから返還しながら生活費をやりくりする癖をつけるために、以下のようにすることをお勧めします。

それは、お給料からまず奨学金の返還額を天引きして、残りを生活費として使うということです。逆に、給料から生活費を使って、残りを奨学金の返還に充てようとすると、ついつい使い過ぎてしまい奨学金の返還が苦しくなってしまうという状況に陥りがちです。

さらに言うならば、天引きをするのは奨学金の返還額だけでなく、貯蓄の分も天引きした方が良いでしょう。貯蓄の目安としては、手取り給料の2~3割程です。手取り額が15万円だとすると、3万円~4.5万円ほどです。ただし、奨学金の返還が1.6万円あるので、貯蓄に回せる分は2万円~3万円程になるでしょうか。また、今回は詳しくお話はしませんが、貯蓄としてただ銀行預金をするのではなく、積み立て投資を始めることも検討してみてはいかがでしょうか。

 

このように、頑張って奨学金の返還と貯蓄をしていくと、数年後にはそこそこの資産が形成されていると思います。例えば、毎月3万円貯蓄をすれば5年後には180万円になっています。一方、奨学金の残高はまだ289万円程残っています(先の事例で、利率固定方式のⒶで変換した場合)。

そうすると、もしかしたら資産を例えば100万円取り崩して、奨学金を繰上げ返還したらいいのではと思うかもしれません。やっぱり、借金は少ない方が気が楽ですよね。

でも、現在のように利率が非常に低い場合、あるいは無利息の奨学金(第一種)の場合は、繰上げ返還による経済的なメリットはあまりありません。主な理由は以下の2点です。

  • 万一、本人が亡くなったり、重度の障害によって返還ができなくなった場合、申し出によって奨学金の返還未済額の全部または一部が免除される制度があり、これが生命保険のような役割をもつ。
  • 奨学金の利率が低いために、繰上げ返還による利息低減効果は非常に小さいので、繰り上げ返済せずに運用によって増やす方が効率が良い(運用の方法によってはリスクがありますが)。

奨学金の制度にとっては繰上げで早期に返還をしてもらえると、それを次世代の学生の皆さんのために使えるので、それはそれでよいことだと思いますが、自分にとっての経済的なメリットも良く踏まえたうえで検討すれば良いのではないでしょうか。

このブログが皆さんのお役に立てば幸いです。ご意見、ご質問などがありましたら、こちらのお問合せページからお願いいたします。

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