年金広報に関する雑感

先日、厚労省において「年金広報検討会」が開催されました。

厚労省のサイト:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_03525.html

本検討会においては、以下の2つの論点について検討を行うということです。

(1)「年金ポータル(仮称)」など年金広報に関する各種事業
(2)平均寿命の伸長化や働き方の多様化等を踏まえた今後の年金広報のあり方

検討会の構成員は、10名の有識者によって構成されており、年金部会の委員でいらっしゃる原加奈子さんや、年金機構、国民年金基金連合会、企業年金連合会、GPIFなど年金に関する情報を発信する側の代表者、さらにマーケティング的な分野の専門家が顔を揃えていらっしゃいます。

(1)の年金ポータルは新年度から運用を開始する予定で、右図のようなコンセプトのものです。

公的年金制度とそれを補完する私的年金制度の運営に関わる団体がそれぞれのホームページで提供している情報について、利用者が必要な情報にアクセスしやすくなるように、年金に関する情報を探すための窓口となるのが、年金ポータルの役割で、2019年4月より運用開始の予定です。

 

年金ポータルサイトの制作を請け負っている業者の方からは、ポータルの基本的方向について説明がありました(詳細は、冒頭の厚労省サイトに公表されている資料4を参照)。

しかし、検討会のメンバーでマーケティングに関する専門家の方からは、いろいろな注文が付き、最後にはもう一度ゼロベースで再検討した方が良いのではないかと厳しいコメントが出ていました。年金ポータルの運用開始の4月までは時間がありませんが、頑張って欲しいところですね。

また、私は専門家ではありませんが、年金ポータルから誘導する各団体のサイトの内容にも、もっと工夫があってもいいような気がしました。

下のイラスト、写真は、年金制度の広報のために使われているキャラクターですが、統一性がないように感じます。年金広報に使用する統一キャラクターを作ったらどうでしょう。また、④のねんきん太郎の着ぐるみを見ると、年金制度の将来に対する不安が…..(以下自粛)

検討会のメンバーの方からも、年金に対する親しみやわくわく感を持ってもらうために、例えば、坂本龍馬のようなキャラクターを使うことも一案という意見も出ていました。私の乏しいイメージを基に作ってみると、下のような感じになるでしょうか。

冗談はこのくらいにしておいて、年金制度の広報をする上で、問題と思われる点が一つあります。それは、政府に対して嫌悪感のようなものを持っている人が多く、そういう情報を発信する人の意見がかなり信じられているのではないかということです。

下に二つの動画を並べてみました。左は厚労省が作成した社会保障教育用の動画で、健康保険や公的年金といった社会保障制度の意義を学ぶためのものです。右はニュースキャスターの辛坊治郎氏が年金制度について解説しています。年金制度の仕組みについての解説は良いのですが、世代間の不平等や年金の積立金は2040年までには枯渇してしまうといった誤った持論を強調し、これを見た人は年金制度あるいは政府に対して嫌悪を感じざるを得なくなるようなものです。

そして、問題は辛坊氏の解説動画のアクセス数の方が圧倒的に多いということです。ネットやメディアを通じて既に公的年金やそれを管掌する政府に対してネガティブなイメージを植え付けられている多くの人たちを、どのようにして政府が運営する年金ポータルに誘導するかということは、大きな課題ではないでしょうか。

今年は5年に1度の財政検証が実施されるので注目していますが、この年金広報に関する検討会の様子もチェックしていきたいと思います。

最後に余談ですが、年金制度の周知、広報を担うはずの社会保険労務士でさえも、誤った情報を広めている危険性があるという事例を紹介します。

最近、受講した年金研修で講師をされていたベテラン社労士の先生のお話です。

平成31年度の年金額改定については、物価上昇率が1.0%で賃金上昇率が0.6%であったことを受けて、賃金上昇率の0.6%で改定されることになりました。このことを説明していた時、

「国は年金を払いたくないから、賃金と物価の伸び率の低い方に合わせているんだ」

と、おっしゃいました。

また、賃金上昇率の0.6%から、さらにマクロ経済スライドによる調整率(キャリーオーバー分含め0.5%)が差し引かれ、最終的な改定率が0.1%となったことに対して、

「年金財政が苦しいから、マクロ経済スライドによる調整でさらに年金額が減額されて、物価が上昇しているのに年金はほとんど上がらなければ、年金生活者の生活は厳しい!」

とぶちまけていました。この先生は、すでに年金を受給されているそうなので、正直なお気持ちかもしれません。また、受講生の社労士の中にも結構年配の方がいらっしゃったので、そのような方の共感を得るためのパフォーマンスだったのかもしれませんが、やはり、研修会という場では、制度の趣旨を正確にお話しして欲しいところです。つまり、

年金の改定を伸び率の低い賃金に合わせたのは、年金の原資である保険料は賃金上昇率の分しか増えないのに、それ以上の年金を支給したら、年金財政的には悪影響で、将来にツケを回すことになる。

ということと、

マクロ経済スライドは、年金の現受給者に少しの減額をお願いすることによって、将来世代の給付水準を維持するという、現世代から将来世代への仕送りである。

という風に解説すべきだったのではないでしょうか。

 

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