平成30年度の年金額改定について

先日厚生労働省より、平成30年度の年金額改定についてお知らせがありました。

www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12502000-Nenkinkyoku-enkinka/0000192296.pdf

今回の改定について、公的年金の財政に対する影響を確認してみます。

  • 年金額は昨年度から据え置き
    結論から言うと、平成30年度の年金額は昨年度と変わらず据え置きとなりました。
    改定の基準となる物価と賃金の変動率は以下の通りでした。
    ・物価変動率       ・・・ +0.5%
    ・名目手取り賃金変動率  ・・・ -0.4%

    簡単に説明すると、物価変動がプラスで賃金変動がマイナスの場合は、年金額は据え置きということになっています。
    物価が上昇しているのに年金額が変わらないということは、年金生活者にとっては年金額が実質的に目減りしていることになります。

  • マクロ経済スライドは実施せず
    マクロ経済スライドは、少子高齢化による年金財政の悪化を抑えるために導入された、年金額を減額する仕組みです。本来であれば、マクロ経済スライドによる-0.3%の調整が行われるはずなのですが、物価・賃金変動による改定が据え置きとされたため、マクロ経済スライドを実施すると、年金の名目額が下がってしまいます。
    このように、年金の名目額が前年度よりも下がってしまう場合には、特例措置として、マクロ経済スライドは実施しないということになっています。
  • 年金財政に対する影響はマイナスに
    マクロ経済スライドは、現在の年金額を抑制して将来世代の年金額を確保する目的のものです。したがって、これが実施されないということは年金財政にとってはマイナスの影響となってしまいます。マクロ経済スライドは、特例措置のために平成16年に導入されて以降、平成27年度に一度実施されただけです。平成30年度からは、実施できなかった未調整分は翌年度以降に繰り越して実施することになっています。年金財政の悪化を将来世代に先送りしないためにも、マクロ経済スライドが確実に実施される必要があるでしょう。
    また、賃金変動がマイナスであるということは、年金の原資である保険料収入もマイナスということになりますが、それに対して年金額を据え置くということは、やはり財政に対してはマイナスの影響となってしまいます。平成33年度からは、今回のようなケースでも、賃金変動に合わせて年金額もマイナスに改定されることになっています。
  • 将来世代にツケを先送りしない
    今回の改定は据え置きでしたが、来年度以降はマクロ経済スライドの未調整分の繰り越し実施や、賃金変動に対する連動が強化されることによって、現在の年金受給者にとっては厳しい改定になることもあります。しかし、これらの施策は将来世代の年金額の水準を確保するためのものなので、「年金カット法案」などという政治家の発言に惑わされることなく、年金制度を正しく理解することが必要でしょう。

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