金融庁 平成29年度 金融行政方針
先日金融庁より「平成29年度 金融行政方針」が公表されました。以下のリンクよりご覧になれます。
http://www.fsa.go.jp/news/29/20171110.html
ところで金融庁は、2週間ほど前に「平成28年度 金融レポート」を公表し、このブログでも取り上げました。金融行政方針と金融レポートは、金融庁による金融行政のPDCAサイクルの中で、右の図のような位置づけになっているものです。つまり、平成28年度金融レポートで報告された、進捗状況、実績評価、現状分析、問題提起を反映させたものが、今回公表された平成29年度金融行政方針であり、また1年後に平成29年度金融レポートが公表されるというサイクルになっています。
さて、その内容ですが、家計の安定的な資産形成の推進と顧客本位の業務運営に関することで、以下の3点が挙げられています。
1.「顧客本位の業務運営」の確立と定着
原則の定着に向け、金融機関の取組みの「見える化」を促進
- 金融機関間で比較可能なKPI等の公表
- 金融機関へのモニタリング
2.長期・積立・分散投資の推進
- 官公庁や民間企業への横展開を視野に、金融庁において職場つみたてNISAを導入
- 職場つみたてNISAの導入と連携した投資教育の推進
- 新たな情報発信チャネルの活用
3.退職世代等に対する金融サービスのあり方の検討
- 退職世代等の様々な状況を踏まえ、金融資産の運用・取崩しをどのように行い、幸せな老後につなげていくか、金融業はどのような貢献ができるのか検討
3については、新たな視点だと思います。私の推測では、これまで槍玉にあがっていた毎月分配型投信が、元本を取り崩しながら生活資金として使う高齢者にはニーズがあるのではないかという論点から出てきたものではないかと思いました。
1の見える化についてですが、KPIとは「Key Performance Indicator」の略で、顧客本位の業務運営の定着度合いを各種指標によって評価しようというものです。どのような指標を用いるかは、各金融機関で決めることですが、KPI等の公表および比較を通じて、顧客本位の良質な金融商品・サービスの提供に向けた金融機関間の競争を促していく、ということです。今のところ、すべての金融機関がKPIを公表しているわけではありませんが、公表されている中で、金融庁が好事例として紹介しているものには以下のようなものがあります。
- 投資信託の販売額上位10銘柄
- 投資信託販売に占める毎月分配型の販売額とそれ以外との比較
- 投資信託残高に対する分配金の割合
- 投資信託販売額に占める自社グループ商品の比率
- インベスターリターンと基準価格の騰落率との差
- 平均保有年数
- 販売に占める積立投信の割合
これらのKPIを見るとすべて投資信託に関するもので、保険商品に関するものはひとつもありません。今後の改善を望みたいと思います。