自分にあった保険選んでますか?
生命保険文化センターより、「平成30年度生命保険に関する実態調査」が公表されました。
リンク:http://www.jili.or.jp/research/report/zenkokujittai.html
これは3年毎に行われている調査で、一般家庭の生命保険加入状況を中心に、老後生活や万一の場合の生活保障に対する考え方をまとめたものです。
この調査の中で、私が注目しているデータの一つが「直近加入の生命保険」に関するものです。これは、調査対象者が過去5年間で加入した保険について、その目的、商品比較、加入チャネル、商品種類などを回答してもらったものです。
以下、これらを順番に見ていきたいと思います。
1.加入目的
加入目的で多いのは、「医療費や入院費のため」と「万一のときの家族の生活保障のため」の2つです。前回の調査(平成27年度)と比べると、「万一のときの家族の生活保障のため」が若干減少し、「老後の生活資金のため」、「貯蓄のため」が若干増えています。
2.商品比較経験
加入時に他の保険商品や保険以外の金融商品と比較しなかった人は全体の3分の2で、前回とあまり変わりません。人生で2番目に高い買い物と言われる保険ですが、これでいいのでしょうか。それぞれの保険で保障内容が異なるので、比較が難しいということもあるかもしれませんが、比較によって価格競争が促進されることは生活者にとってもメリットとなるものなので、業界はこの現状を問題として見て欲しいところです。
あと、保険商品との比較だけでなく、保険商品以外の金融商品も含めて比較する必要があるケースもあります。その例として、このブログでも取り上げた変額保険の例を見て下さい。
3.加入チャネル
保険をどこで(だれと)契約したのかという問いに対しては、生命保険会社の営業員という回答が過半数を占めていますが、その割合は前回調査より低下しており、その代わり、金融機関以外の保険代理店という割合が上昇しています。
4.加入した保険の種類
最後に、加入した保険の種類を見てみましょう。これを、1の加入の目的と重ねてみると興味深い結果が浮き彫りになります。加入目的で回答が多かったのは、「医療費や入院費のため」と「万一のときの家族の生活保障のため」でした。下の表を見ると、前者の目的のために加入した保険は、医療保険とガン保険でしょうか。一方、後者の目的のために最も選ばれた保険は、終身保険ということになります。
現時点では、年齢別の回答結果までは公表されていませんが、前回の調査の結果を見ると、30代、40代という現役世代の回答結果を見ても、同じような傾向を示しています。つまり、現役世代で世帯の稼ぎ頭が死亡した場合の保障として終身保険が選ばれているということが言えそうですが、本当に目的に合った保険が選ばれていると言えるのでしょうか。
これも以前にこのブログで、終身保険と掛捨ての定期保険を比較したものがあるので見て下さい。現役世代の死亡保障としては、終身保険よりも掛け捨ての定期保険と積立貯蓄を組合わせたプランの方が、遺族により多くのお金を残せることを示しています。ここで、掛け捨ての保険は定期保険でなく、収入保障保険を使っても結構です。
5.まとめ
この生命保険に関する実態調査は、保険の加入にあたって十分な比較検討をしていないために、目的に合った種類の保険を選んでいない人が相当数いるのではないか、ということを示していると思います。顧客本位の業務運営に関する原則の中でも、「重要な情報の分かりやすい提供」として、以下のことが求められているということを、改めて強調しておきます。
金融事業者は、顧客との情報の非対称性があることを踏まえ、上記原則4(手数料の明確化)に示された事項のほか、金融商品・サービスの販売・」推奨等に係る重要な情報を顧客が理解できるよう分かりやすく提供すべきである。