日経は、ビットコイン推しの過去を反省すべし!
昨日(12月19日)の日経の記事について一言いいたいことがあります。
日経電子版のリンク:〈金融取材メモ〉「暗号資産」と改称のワケは 金融庁、仮想通貨に苦悩
記事は、金融庁が「仮想通貨」という呼び名を「暗号資産」に改めるということについて解説しているものですが、日経の過去の仮想通貨についての報道がなかったかのような論説にはあきれてしまいます。まぁ、誰でも見込み違いということはあるので、それを明らかにして認めるという姿勢が大事ではないでしょうか。
さて、過去の報道もさることながら、今回の記事の中でも誤りがあります。
2017年度の仮想通貨売買代金は70兆円弱だが、うち8割は信用取引。通貨としての価値が安定しないと支払い手段としては使いにくいうえに、潜在的な損失を抱えていては消費意欲も湧かない。
文中の「8割は信用取引」という部分が間違いです。下の図表を見て下さい。これは金融庁の「仮想通貨交換業等に関する研究会」で提出された資料の抜粋です。
これによると、仮想通貨取引の8割を占めるのは「証拠金、信用、先物取引」の合計で、その内訳として、「証拠金97.44%、信用取引1.13%、先物取引1.43%」と記されています。そうすると、「8割は信用取引」という表現はおかしく、「8割は証拠金取引」と書くのが正しいでしょう。
信用取引も証拠金取引も、どちらもレバレッジをかけて行う取引だから同じようなものではないか、という人もいるかもしれませんが、仮想通貨に関しては、大きな違いがあるのです。
信用取引は、買いの場合は現物の購入代金を借り、売りの場合は売るための現物を借りて売買をする取引です。したがって、信用取引は現物取引とつながっている、すなわち現物市場に流動性を供給するという、一応大義名分が立つ訳です。
ところが、仮想通貨の証拠金取引は、FX等の他資産における証拠金取引と異なり、現物市場と繋がりのない単なる賭博行為としか考えられないものなのです。詳しくは、ちょっと前に書いたブログをご参照ください。
関連ブログのリンク:ビットコイン証拠金取引の仕組み
「8割は信用取引」と書いたのは、単なる間違いだったのでしょうか?
問題の多い証拠金取引から読者の目をそらすために意図的に書いたような気もします。なぜなら、証拠金取引を提供している仮想通貨交換業者国内最大手のビットフライヤー社に日経はグループ会社を通じて出資しているからです。まぁ、そこまで考えるのは想像力が逞しすぎるでしょうか(笑)。
さて、今回の記事の中には、こんなコメントもあります。
本来、低コストかつ簡単に個人間でやり取りできるのが仮想通貨の強みだった。だが、投機で価格が乱高下する現状で、ビットコインが支払い手段になりきれないのは必然といえる。
よくもしゃあしゃと、「必然といえる」なんて書けますね(笑)。
以下に、2018年1月にコインチェック社の仮想通貨不正流出事件が起きるまで、日経が仮想通貨をどのように記事で取り上げてきたか見てみましょう。
ビットコイン対応店舗、国内2万カ所へ急拡大 17年中にも
インターネット上の仮想通貨「ビットコイン」が普及し始めている。国内でビットコインを支払いに使える店舗は2017年中にも現在の約5倍の2万カ所まで増える見通しだ…..(2017年1月23日)
ビットコイン広がる用途 誕生8年、国内30万店へ
外食・小売り、相次ぎ導入仮想通貨の奔流が日本に押し寄せ始めた。外食や小売りなど買い物に使える店舗は増え続け、メガバンクなど既存の金融勢力は関連技術を取り込もうと合従連衡を急ぐ…..(2017年5月23日)
ビットコイン使ってみた 決済はスマホかざすだけ
10月から仮想通貨取引所の登録制が始まり、資金管理体制などで一定の条件を求められるようになった。取引の安全性はこれまでより高くなり、これを機に仮想通貨を使ってみようと考えている人も少なくないはず。取引口座を開き、買い物をするにはどんな手続きを踏めばいいのか。記者が実際にビットコインを使ってみた…..(2017年10月4日)
ビットコイン、VISAに入金 取引所ビットフライヤー
仮想通貨ビットコインを利用した買い物が身近になってきた。国内最大規模の仮想通貨取引所を運営するビットフライヤー(東京・港)が、VISAブランドのプリペイドカードにビットコインで入金できるサービスを6日に始める…..(2017年10月5日)
これだけビットコインを推しておきながら、今更「支払い手段になりきれないのは必然といえる」なんて、ちょっとお粗末ですね。
まぁ、これも日経クオリティということで、私たち読者は、こんなこともあると頭に入れた上で、新聞記事を読んだ方がよさそうです。
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