シニア向けに必要な金融サービスとは?
日経電子版の記事で、分配型投信がシニア向けに提供されているという記事が出ていました。
記事のリンク:分配型投信、シニア向けに新型続々 隔月支払い主流
最近は、毎月分配型投信が資産形成には向いていないという金融庁の指導もあり、人気が下火になってきていますが、最近の傾向は、「毎月分配型」ではなく、「奇数月分配型」ということみたいです。
これは、公的年金の支払い月が偶数月に2か月分をまとめて受け取る仕組みになっているので、収入のない奇数月に分配金を受け取れるようにするということらしいですが、本当にシニア向けに適したものと言えるのでしょうか。
私も一年ほど前に、このブログで毎月分配型投信の活用法(ブログのリンクはこちら)について考えを述べましたが、改めて考えてみたいと思います。
1.シニア向けの投資信託は必要か
記事で紹介されている投資信託は、分配金の受け取り月が、年金の受け取りのない奇数月であるとか、その愛称から、「シニア向け投資信託」として分配金を退職後の生活資金に充てようと考えているシニア世代の人気を集めるかもしれませんが、これらの投資信託の手数料はどうでしょうか。
下の表は、記事で紹介されている投資信託の一覧に、手数料(販売手数料、運用管理費用)の情報を加えたものです。
資産形成に適しているとされている、つみたてNISAの対象となっている投信は、販売手数料はゼロで、運用管理費用もインデックス型だと0.2%程のものがあります。
それと比べると、これら「シニア向け投信」の手数料は高くないでしょうか。つみたてNISAの対象投信は、積み立てでなくても、退職金を運用しながら取り崩していく目的でもお勧めできるものです。
「シニア向け投信」を検討している皆さんは、そのネーミングに惑わされず、効率よく運用しながら老後の生活資金の足しにする方法を見つけて欲しいと思います。また、販売側の金融機関は、顧客が十分な比較検討ができるように情報提供することや、取り崩しサービスの拡充にも力を入れる必要があるのではないでしょうか。
現在、投資信託の取り崩しサービスは、SBI証券の「投資信託定期売却サービス」だけのようです。
2.老後の生活資金を確保する方法は資産の取り崩しだけではない
また、65歳から受け取る公的年金だけでは生活費が足りないという場合、退職金を運用しながら取り崩すことによって不足分を補うことを検討する方は多いと思いますが、それだけが選択肢ではありません。
簡単な例として、サラリーマンであった夫と専業主婦の妻という、いわゆるモデル世帯のケースを考えてみます。
モデル世帯が65歳から受け取ることができる年金額は、夫婦合計で月額22万円程ですが、これに対して支出が27万円であるとしましょう。そうすると毎月5万円足りないので、これを1000万円の退職金を年利3%で運用しながら取り崩して、不足分を補うとします。そうすると、23年後には1000万円の退職金は底をついてしまいます。
これに対して、65歳から公的年金を受給せずに、68歳まで繰り下げたらどうでしょう。月27万円の支出は、3年分で972万円になるので、1000万円の退職金は、ほぼ無くなってしまいます。一方、年金は繰り下げすると、1か月あたり0.7%増額されるので、3年間繰り下げると25.2%の増額となります。つまり月22万円の年金が27.5万円となり、これが一生続くことになるのです。
これは単純な例ですが、公的年金の繰下げがリタイア後の生活資金を確保するための選択肢の一つであることは理解して頂けたでしょうか。
3.まとめ
人生100年時代のリタイア後の生活資金を確保するために必要な金融サービスは、シニア向けの金融商品だけではありません。コストの安い投資信託で運用しながら、それを皆さんのライフスタイルに合わせて取り崩すサービスや、公的年金の繰り下げを活用するプランニング等、幅広く総合的に検討をすることが必要になると思います。
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