高齢者は「仕組債」に注意を!

「ぶっ殺す」!・・・金融商品トラブルの元は?

先日下記のようなニュースが報道されていました。

ニュース記事のリンク:「ぶっ殺す」500万円損失で…証券会社社員を脅迫か

金融商品のセールスを巡って起きた、顧客と証券会社のトラブルです。記事を読むと、トラブルの元は「為替変動型の証券」という金融商品ということで、この証券に関する詳しい説明はありませんが、おそらく、下の「デュアル・カレンシー社債」のようなものではないでしょうか。

これは、表面的には円建ての債券で、利率がとても魅力的に見えます。しかし、満期時の為替レートが債券発行時と比べて7円以上円高になると、豪ドルで償還され、円の額面を大きく下回ってしまいます。

例えば、この債券に1000万円投資した場合、もし償還時のレートが、1豪ドル=60円になってしまうと、償還金は13.9万豪ドル(=1000万円÷72円/豪ドル)で、これを円に換算すると、833万円(=13.9万豪ドル×60円/豪ドル)になります。利息が2年分で30万円(税引前)ありますが、トータルで、137万円の損失ということになります。

このように、デュアル・カレンシー社債は、為替レートに連動したリスクの高い証券ですが、多少の円高であれば円の額面100%が戻ってくるので、説明書の赤い字で示された部分だけに目が行って青い字で示されている為替リスクを過少に評価して購入してしまう方が多いのではないでしょうか。

また、説明書の4に記載されているとおり、早期償還されることもありますが、これがまた罠になるのです。一度、早期償還によって投資したお金が戻ってくると、これに味を占めて、また同じような債券を購入してしまいがちですが、これを繰り返しているうちに大きく円高になってしまい、それまで受け取った利息を上回る損失を被ってしまうのです。

 

仕組債には手を出すな!

このような債券は「仕組債(しくみさい)」と呼ばれていて、一見、高利率に魅力を感じるかもしれませんが、リスクの高い「デリバティブ」という「仕組み」が内包されているものなので、投資経験の浅い一般の生活者は絶対に手を出してはいけない金融商品だと肝に銘じて下さい。

いま紹介したデュアル・カレンシー社債は、為替レートに連動する仕組債ですが、株価に連動する仕組債もあります。デュアル・カレンシー債と同じような仕組みですが、以前これに関するコラムを書きましたので、よろしければ参考にして下さい。

関連コラムのリンク:割に合わない「仕組債」のカラクリを知る

冒頭で、仕組債と思われる金融商品を購入した高齢者のトラブルを紹介しましたが、私が最近ご相談を受けた高齢のお客様にも、証券会社から株価に連動する仕組債を勧められて購入し、最初は早期償還でうまく行ったのですが、戻ってきたお金で再度仕組債を購入したところ、株価が下落して損失を被ったという方がいらっしゃいました。

このお客様は、4年程前に国債より多少利回りの高い円建ての社債を購入したのですが、より利回りの高い債券ということで、仕組債を勧められたようです。証券会社の営業職員も、リスクの説明は一通りしているのでしょうが、株式の投資経験もなく、ハイリスク・ハイリターンの運用を望んでいない顧客に、株価連動の仕組債の勧誘をするということが信じられませんでした。

そこで、お客様には「証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC)」に相談することをお薦めしました。

 

金融商品トラブルの駆け込み寺「FINMAC」

FINMACは右の図(FINMACホームページより)の通り、日本証券業協会などの公的な団体が連携して設立した組織で、金融庁の認定を受けています。

株や投資信託、FXなどの取引に関するトラブルについて、相談や苦情を受け付け、中立、公平な立場で解決を図る団体です。

金融商品のトラブルを抱えていても、弁護士を立てて裁判で争うことは、いろいろ敷居が高く感じるでしょうから、まずはFINMACに相談してみてはいかがでしょう。

 

しかし、まずは金融商品のトラブルには巻き込まれないことが第一です。仕組債は、まとまったお金をリスクを抑えつつ、少しでも高い利回りで運用したいというニーズが多い高齢者の気持ちの隙間をついて勧誘されることが多いと思います。高齢者の皆さんは、営業職員が「リスクをある程度抑えて、高い利回りが期待できる債券があります」なんて言ってきたら、「それって、仕組債でしょ。お断りします!」と即座に断って下さい。

高齢者の皆さん、「仕組債」と「オレオレ詐欺」には、くれぐれも気をつけましょう!

あっ、あと詳しい説明は省きますが、「新興国債券」にも注意して下さいね!

 

このブログが皆さんのお役に立てば幸いです。ご意見、ご質問などがありましたら、こちらのお問合せページからお願いいたします。

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