値動きが大きな商品が有利??

金融庁の審議会の資料に誤解を招くものが…

2月19日に市場ワーキンググループが金融庁において開催されました。議題は、高齢化社会における金融サービスのあり方とダークプールの現状と課題で、下記のサイトに資料等が公表されています。

関連リンク:金融審議会「市場ワーキンググループ」(第19回)

公表されている資料にさっと目を通したのですが、「独立系FPによる高齢者の資産運用に関する考察」という資料の中で、ちょっと気になる部分がありました。

資料17ページの「積立て投型資では値動きが大きな商品の方が有利」というスライドです。

右のスライドの通り、値動きのパターンが異なる二つの商品に積み立て投資をしたらどうなるかということを検討したものです。

グラフで濃紺の線で表されている方は、1万円から始まり、上は1万5千円、下は5千円の間を上下するというもので、もう一つのピンクの線は、同じく1万円から始まり、上は1万2500円、下は7500円の間を上下するというものです。そして、共に20年後には1万円で終わっています。

このような値動きをする商品に毎月3万円を積み立てしたら、20年後には元本720万円に対して、濃紺の値動きの大きい方は791万円に、ピンクの年後期の小さい方は735万円になるので、値動きが大きな商品の方が有利と結論付けているようですが、本当にそうでしょうか。

もし、積み立てをもう1年続けたらどうなるでしょう?濃紺の方は5千円まで下落し、ピンクの方は7500円まで下落してしまい、その結果積み立ての評価額は、濃紺の方は421万円に、ピンクの方は583万円になってしまいます。共に元本を下回ってしまいますが、値動きの小さいピンクの方が値動きの大きい濃紺の方を上回る結果となってしまいます。

どうも、値動きが大きいからと言って必ずしも積み立て投資にとって有利とは限らないようです。

この資料が、ワーキンググループの審議の中でどのように取り上げられ、議論されたか、議事録で確認しないと分かりませんが、誤解を招かないようにして欲しいと思います。

 

問題の資料が示唆する重要なポイント

ところで、この資料が示唆する重要なポイントがあると思います。それは、値動きの大小には関係なく、共に1万円で始まり20年後に同じ1万円であったにも関わらず、積み立てによっていくらかプラスになっているということです。

実は、これと似たようなパターンが現実に起きているのです。下のグラフを見て下さい。

このグラフは、日経平均で2000年3月から2018年12月までの約19年間、毎月1万円積み立て投資を行ったケースをシミュレーションしたものです。

ご覧の通り、日経平均は始め(2000年3月)も終わり(2018年12月)も2万円近辺ですが、積み立て投資の評価額は、元本の1.25倍ほどに増えています。

2000年3月以降、日経平均は、ITバブルの崩壊等のために、8000円を割れるところまで急落しましたが、コツコツと積み立て投資を継続していれば、プラスになるのです。

昨年の終わりから、株式市場の動きが不安定になっているために、積み立て投資を始めたばかりの方は、不安に感じているかもしれませんが、このような過去の歴史に学んで、ぜひ継続して欲しいと思います。

 

一般生活者に分かりやすく伝えるつもりが…

さて、ここでもう一度話を最初に戻してみたいと思います。

私は、今回市場ワーキンググループに提出した資料の説明は誤解を招くもので、注意が必要だと思います。ただ、このような資料を作る動機としては、市場が不安定で値動きが大きくなっても、積み立て投資を継続することが大事であるということを伝えたかったのかもしれません。それ故、一般の生活者の皆さんにも分かりやすい単純化した事例を用いたのでしょう。

しかし、その事例をあたかも一般的な理論のように紹介することは問題です。

似たような事例を、もう一つ取り上げてみましょう。下のグラフを見て下さい。あるFP会社のホームページに掲載されていたものです。

これも、2つの値動きのパターンを用いた説明です。点線のグラフ(①)は、毎年80%の上昇と50%の下落を交互に繰り返し、オレンジ色のグラフ(②)は、毎年40%の上昇と25%の下落を交互に繰り返すと仮定したものです。

これによると、ぶれ幅が大きい①の方は、年を追うごとに価格が下落していき、ぶれ幅の小さい②の方は、価格が上昇していくことになります。

そして、この事例に基づいて「ぶれ幅がなだらかなほど最終的にプラスとなる」と結論付けています。なんか、先の事例と真逆ですね!

これも、分散投資によってリスクを抑えることの重要性を伝えたかったのだと思いますが、ちょっとまずいですよね。

投資の基本は、「ハイリスク・ハイリターン」、「ローリスク・ローリターン」ですから。

①については、80%上昇と50%下落を繰り返すので、平均リターンがマイナス10%(1.8×0.5=0.9)で、②は40%上昇と25%下落を繰り返すので、平均リターンがプラス5%(1.4×0.75=1.05)というふうに数字が作られているだけですよね。実際にこのような値動きをする商品はあり得ないと思います。

今回取り上げたような2つの例では、長く継続することや分散投資によってリスクを抑えるといった、投資の基本を一般生活者に分かりやすく説明しようという試みだと思いますが、だからといって、誤った理論を伝えてしまうことはいけません。私も、FPとして気を付けていきたいと思います。

 

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