ビットコイン証拠金取引の仕組み

仮想通貨に関しては、今年1月のコインチェック社や最近のテックビューロ―社における流出事件、マネーロンダリング等の犯罪利用、投機商品として利用されていることなど、いろいろ問題を抱えていますが、今回は、仮想通貨の証拠金取引について、その問題と思われる点をお話ししたいと思います。

1.仮想通貨取引の現状

下の図表は、金融庁が主催している、仮想通貨交換業等に関する研究会(以下、研究会)の資料です。それによると、日本における仮想通貨取引は、その8割が証拠金取引です。仮想通貨が、その本来の目的と考えられていた、支払いや決済の手段として利用されておらず、価格の変動による値ざやを稼ぐ投機的な目的に利用されていることを表していますね。

 

2.仮想通貨の証拠金取引は法制化されていない

下の図表も、同じく研究会での議論に使われた資料です。仮想通貨の利用方法に対応した法規制の現状を表しています。ご覧のとおり、資金決済法で仮想通貨交換業として法律で定められているのは、支払い・決済手段としての現物取引だけであり、証拠金取引や先物といったデリバティブ取引は、法制化されておらず、これから検討するということなのです。

そして、図表下の「検討の視点」のところで、「仮想通貨を用いた個々の行為が、金融(金銭の融通)の機能を有するかどうか」とありますが、私は現在の証拠金取引は、金融の機能を有していないと考えています。

皆さんの中には、外国為替証拠金取引(FX)は金融商品取引法(金商法)で定められているのに、何故仮想通貨の証拠金取引は違うのかと思う方もいらっしゃるでしょう。以下に、FXと仮想通貨の証拠金取引の構造的な違いを示して、その理由を説明したいと思います。

 

3.FXと仮想通貨証拠金取引の違い

それでは、まずFXの仕組みを表した下の図をご覧ください。FXにおいては、取引所FX(くりっく365)と店頭FXのいずれも、マーケットメーク方式という仕組みになっています。

FXの取引はすべて、「顧客」対「マーケットメーカー」という形式で行われます。マーケットメーカーは、プロ同士が取引をしている外国為替市場(図の右側)の売買レートよりわずかに広いレートを顧客に提示し、顧客との取引が成立すると、それと反対の取引を外為市場で行い、リスクをフラットにします。上の図の例だと、顧客からのドルの買い注文に応じるやいなや、外為市場で同じ数量のドルを買い、ポジションをフラットにする訳です。その際、顧客に売ったレート(113.70)と外為市場で買ったレート(113.68)の差の0.02が利益となります。

ここで重要なことは2つあります。

①証拠金取引と同じ額の取引が、外為市場で発生する。したがって、証拠金取引は外為市場に流動性を供給していると言える。

②マーケットメーカーは、常に外為市場のレートに合わせて、FXの顧客に提示するレートを決めているので、FXと外為市場のレートに乖離は生じない。

それでは、仮想通貨の証拠金取引はどうでしょう。

仮想通貨の証拠金取引の代表例として、業界最大手のビットフライヤー社が提供している、ビットコインの証拠金取引の仕組みを下の図に表しました。

ビットフライヤー社の証拠金取引は、FXとは異なる、マッチング方式という仕組みを採用しています。マッチング方式とは、顧客同士の注文をマッチングすることによって売買を成立させるもので、株式の取引と同じ方式です。

しかし、ビットコインの証拠金取引は、FXと異なり、現物市場とのつながりが希薄になっています。これは、FXのようにマーケットメーカーを通じて、現物市場に流動性供給し、取引価格を同じ水準に維持するメカニズムが脆弱だからです。

上の図の例だと、証拠金取引でビットコインを80万円で売った顧客Bが、現物市場で78.1万円でビットコインを買い、それで証拠金取引の売り建てポジションを決済できれば、1.9万円分の利益をノーリスクで得ることができます。しかし、同じことを他の顧客もやろうとすると、証拠金取引と現物取引の価格差がゼロに収れんするはずです。

このように、証拠金取引のポジションを現物を用いて決済することを現引・現渡といいますが、ビットコインの証拠金取引については、現引・現渡に対して、回数を制限し、20%という法外な手数料を課しているため、現引・現渡による価格収れんメカニズムが機能せず、証拠金取引と現物市場の価格の乖離が恒常的に発生しています。

また、この価格の乖離を解消するために、証拠金取引で乖離を広げる方向の約定には、追加手数料を徴収するようにしましたが、このような小手先の対策では、やはり乖離は解消していません。

結論としては、ビットフライヤー社が提供するビットコインの証拠金取引については、ビットコインの現物市場に流動性を供給するものとは言えず、また、現物市場と証拠金取引の価格に乖離があるために、リスクヘッジ機能を提供しているという言い分も説得力に乏しい、したがって、この証拠金取引が金融の機能を有するかと問われれば、NOと言わざるを得ないと思うのです。せめて、FXと同様のマーケットメーク方式にするべきではないでしょうか。

これまでの研究会では、仮想通貨の証拠金取引については、FXと同様のレバレッジ規制の必要性という話が主ですが、ここで挙げたような論点についても検討して欲しいと思っています。

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