第6回社会保障審議会年金部会を傍聴しました

11月2日に開催された、社会保障審議会年金部会(第6回)を傍聴してきました。

今回のテーマは、前回から引き続き、「雇用の変容と年金(高齢期の長期化、就労の拡大・多様化と年金制度)」です。

以下に、議論の内容をまとめてみましたが、議論されたことのすべてを網羅していないことと、委員の方の発言を聞き間違っているかもしれないので、ご了承ください。詳細は下のリンクのサイトにある資料と、後で公表される議事録でご確認ください。

厚労省のホームページ:社会保障審議会年金部会

1.「支給開始年齢の引上げ」は必要か

今回事務局より提供された資料では、まず冒頭(3ページ)で用語の整理がされています。日本の年金制度は、60歳から70歳までの間で自分の事情に適したタイミングで年金の受給を開始することができるもので、最近は高齢期の就労の多様化に対応するために、70歳という上限をさらに延ばそうという議論がされています。しかし、これを「支給開始年齢の引上げ」と混同して、年金制度に対するネガティブな感情を持つ人も少なくないようです。

そこで、まず、日本の年金制度と現在議論されていることを正しく理解してもらうために、用語の整理をしておこうということだと思います。これから、私たちは、年金制度について議論する際には、次の3つの用語をしっかり理解して使い分ける必要があります。

そして、4ページでは、「諸外国における高齢者雇用法制と年金の支給開始年齢等」として、米、英、独、仏、スウェーデンの5か国の比較がされています。ここで、スウェーデンを除く4か国では、65歳以降への支給開始年齢の引上げが段階的に実施されていることが示されています。スウェーデンは、支給額を経済や人口動態の変動に応じて自動調整するメカニズムがあるので、支給開始年齢の引上げによる給付の抑制は必要ないということです。

この資料に関して、委員の出口さんから、少々驚きの発言がありました。日本は、比較を行っている諸外国より高齢化が進んでいるのだから、諸外国と同様に支給開始年齢を70歳程度まで引き上げることを検討することが自然ではないか、とおしゃるのです。

これまでの、年金部会における出口さんの発言には、うなずくことが多かったのですが、どうされたのでしょうか。支給開始年齢と受給開始時期を混同されたのかもしれません(でも、前述の通り、冒頭で用語の定義はちゃんとされていたのですが、、、)

出口さんの発言の真意や意図はよく分からなかったです。議事録で再確認したいと思います。

10月22日に開催された、政府の未来投資会議(議長、安倍首長)においても、65歳となっている支給開始年齢は引き上げず、年金をもらい始める年齢を高齢者が自分で選択できる範囲を広げることを検討する方針が示されています。

2.繰上げ・繰下げ受給について

繰上げ・繰下げ受給制度については、資料で以下のようなポイントが示されました。

  • 繰上げの利用率は、2012年度の27.6%から2016年度には20.5%に低下傾向にある。繰下げの利用率は概ね1%程度で大きな変化は無し(資料12ページ)。
  • 65歳以降に在職している人が繰下げた場合には、在職支給停止に相当する部分は繰下げによる増額の対象にならない(資料14ページ)。
  • 繰下げ制度の周知のために、制度説明用のリーフレットを分かりやすく改善した(資料15ページ)
  • 60歳以降に継続して働いた場合の年金水準の変動について、モデル世帯を例として、具体的に示された(資料17~18ページ)

これに対して、委員の方からは、年金水準を具体的に示すことは良いが、これをモデル世帯に限らず、単身世帯や共働き世帯についても示す必要があるのではないかとか、リーフレットももっと分かりやすく、ビジュアルに、さらなる改善が必要ではというコメントがありました。

私は、将来の働き方や繰上げ・繰下げによる年金水準の変動は、ねんきんネットを活用してシミュレーションすることができるので、パソコンやスマホに慣れている現役世代には、ねんきんネットの活用してもらうように広報したらいいのではと感じました。

また、年金の受給を繰下げて待期している最中に、重病とかでまとまったお金が必要になった場合には、65歳時からの年金をまとめて請求できることや、万一亡くなった場合は、65歳から死亡した月までの年金は所定の遺族に支給されることも、周知する必要があると思いました。

年金部会終了後のメディア向けのブリーフィングのセッションでは、受給開始時期が70歳以降に拡大された場合の増額率の水準や現行の増額率は維持されるのかという質問があり、厚労省が分から来年の財政検証の中で確認していくというような回答がありました。

私は、繰下げの増額率については、現行の1カ月あたり0.7%という増額率は下がる可能性があるかもしれないと気になっています。下の図は、資料11ページの抜粋です。3番目のポイントの通り、繰上げ・繰下げは財政上中立とされている、つまり、図で示されている60歳、65歳、70歳からそれぞれ受給する年金額の期待値(簡単にいうとそれぞれの長方形の面積)は同じになるということだと思います。

現在の増額率および減額率は、1995年の第18回完全生命表に基づいて決められましたが、当時より寿命が延びているので、上の図の「平均的な受給期間」および「平均的な死亡年齢」が右側にずれる、つまり、それぞれの長方形が横に伸びる感じになります。その場合、3つの長方形の面積が同じくなるためには、60歳繰上げの長方形の高さを上げて、70歳繰下げの長方形の高さを下げなければなりません。即ち、繰上げの減額率と繰下げの増額率が共に低くなることになります。また、寿命の延びだけではなく、将来の年金額を65歳時に割引く金利も低下しており、同じ方向に影響を及ぼすのではないかと推測されます。私の非常にラフな試算ですが、例えば、現行の5年で42%とされている繰下げの増額率は、10%程低下してもおかしくないと思います。

このように、繰上げ減額率と繰下げ増額率が見直された場合、相対的に繰上げの方が得に見える結果となるかもしれず、注意が必要です

3.在職老齢年金制度について

これは、個人的に注目していた論点です。在職老齢年金制度とは、就労によって賃金を得ている60歳以上の厚生年金受給者を対象に、被保険者として保険料を負担してもらうとともに、賃金と年金の合計額が一定以上となる場合に、年金支給を停止する仕組みです。特別支給の老齢年金を受給する65歳までの人と、65歳以降の人で支給停止となる基準が異なり、それぞれを低在老と高在老と呼んでいます。

まずは、資料で示されたポイントです。

  • 低在老については、対象者数は約88万人で受給者総数の約20%であり、これが就業を抑制する、働く意欲を阻害する要因となっているという研究結果がある。ただし、特別支給の老齢年金制度は、男性が2025年、女性が2030年までなので、それ以降は対象者はいなくなる。
  • 高在老については、対象者が約36万人で受給者総数の約1.4%と少数で、就業抑制効果は認められない。高在老における支給停止額は現在約4000億円である。

これに対する委員の方の意見ですが、低在老については時限的な措置なので、そのまま対象者がいなくなるまで継続という方が多かったのですが、高在老については、意見が割れていました。

高在老制度を維持するべきという方の意見は、

  • 老齢年金は、老齢による稼得能力の低下を保障するものである。
  • 所得の再分配という観点からも、真に必要な人への分配を考えるべき。

一方、高在老制度を廃止すべきという方の意見は、

  • 年金制度を分かりやすくする(ことによって、制度に対する理解と信頼を高める?)
  • メディアは高所得者優遇というかもしれないが、的外れ。
  • 再分配機能や財源は税も含めて検討すればよい。
  • 現在は対象者が少なくても、今後65歳以降の就業が広がれば、賃金カーブのフラット化によって対象者が増えるかもしれない。

いずれにせよ、来年度の財政検証におけるオプション試算として、財政への影響も見ながら議論をしていくことになりそうです。

個人的には、高在老は維持するべきと考えています(理由は上の通り)。また、もし、高在老を廃止する財源があるならば、それを遺族厚生年金に繰下げによる増額分を反映させることに使えないのかなぁ、なんてことも思ったりします。

以上、第6回年金部会の傍聴メモでした。

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