年末調整のしくみ(前編)

1.日本人に必要な金融経済教育は?

私は日頃から、金融経済教育の中で優先順位をつけるならば、社会保障、税金、投資の順ではないかと言っています。もちろん、それぞれが重要なのですが、FPとして活動していると、金融業界からの「日本人には投資教育が必要だ」という声は、よく聞こえてくるのですが、社会保障と税金に関しては、それほどでもないように感じます。

しかし、このような現状に違和感を感じるところもあります。なぜなら、投資には「やらない」という選択肢がありますが、社会保障や税金は人生の中で関わらずに済ませることはできないからです。

例えば、年収500万円の単身世帯の方だと、年間で社会保険料は70万円程、所得税と住民税は合わせて30万円程は払っているはずです。それにも関わらず、税金のことは会社任せでよく知らないとか、社会保障制度については、年金に代表されるように偏見や誤解が多く、国の柱となる重要な制度について理解していない方が多いのではないのでしょうか。

社会保障制度に関しては、このブログでも度々取り上げていますので、今回は、税金について解説したいと思います。まず、前編では給与所得者の所得税を納める仕組みである、源泉徴収と年末調整について解説し、後編では、年末調整で処理される主な控除項目について解説します。しっかりと理解して、皆様のマネープランのお役に立てて頂きたいと思います。

2.所得税の源泉徴収(給与天引き)~ 所得税の仮払い

所得税は、本来毎年1月~12月までの1年間を通じて得た収入を基に計算されますが、年間収入が確定する12月まで待って1年分まとめて徴収するのでは、金額が大きくなり、納税者である従業員が納税資金を準備しておかなければならず大変ですし、国にとっても取りはぐれてしまうリスクが大きくなります。そこで、給与支払者(会社)は、給与や賞与の支払いの際に、その額に応じた所得税を源泉徴収して、これを国に納付しています。つまり、毎月給料から天引きされる所得税は、仮払のようなものです。そして、源泉徴収の金額は、給与所得の源泉徴収税額表および、賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表に定められています。

国税庁ホームページのリンク:
給与所得の源泉徴収税額表
賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表

この税額表を使って、自分の源泉徴収額を確認してみましょう。参考として、計算例を以下に示しました。もし、皆さんの給与明細の中に、「課税対象額」という項目がある場合には、その金額を税額表に当てはめて下さい。税額表は平成30年用なので、平成30年1月以降に支給された給与で確認してください。万一、金額が合わない場合は、人事や総務等の担当部署と確認した方が良いかもしれません。

また、賞与の源泉徴収額の計算方法は異なります。詳細は省略しますが、興味のある方は国税庁のホームページで確認してください。

 

3.年末調整のしくみ ~ 所得税の清算

所得税の源泉徴収は、仮払いのようなものと説明しましたが、年末調整では、1年間の収入額に対して計算された確定値と、源泉徴収された額との過不足を清算します。例えば、2の設例と同じ給与が1月から12月まで支給されたとすると(賞与は無しと仮定)、下のように7,600円が還付されることになります。

上の例のように、給与や賞与の支払い毎に天引きされる源泉徴収の額の合計は、通常年間収入を基に再計算される税額より多くなっているので、年末調整では還付される方が多いと思います。但し、年の途中で扶養家族の人数が減ったり(例としては、子供が就職するケース)、賞与の額が大きかったりすると、不足分を徴収される場合もあります。

また、生命保険料控除や個人型確定拠出年金(イデコ)の掛金の控除は、年末調整で反映させることによって、還付を受けることができます。ここら辺の話は、後編で詳しく解説したいと思います。

 

4.自分の所得税率を確認しよう!

年末調整が終わると、会社から源泉徴収票が配られます。給与所得者の場合は、住宅ローンの審査などで、収入を証明する書類として使うこともあると思いますが、貰いっ放しで無くしたり、捨てたりする人もいるかもしれません。これは大事な書類なので、ちゃんと保管しておいて下さいね。

この書類で確認して欲しいことが一つあります。それは、皆さんの所得税率は何%かということです。

まず、下の源泉徴収票の例を見て、「課税される所得金額」を計算してください。

 

次に、その金額を下の表にあてはめて、自分の税率を確認してください。また、表の下の(注)にしたがって所得税額を計算して、それに復興税を加算するための102.1%を乗じた金額は、源泉徴収票の「③源泉徴収税額」と一致するするはずです。今回は、ここまで確認できれば十分です。

ところで、自分の税率を知って何かいいことがあるのか、と思う方もいらっしゃるかもしれません。

はい、いいことがあるんです。生命保険料や個人型確定拠出年金(イデコ)の掛け金を支払う場合には、所得控除という税制の優遇措置がありますが、自分の税率を知っておくと、それによって、いくら節税ができるのか分かるので、生命保険に加入したり、イデコを始めるメリットをしっかりと把握して検討することができるのです。詳しいことは、次回(後編)で解説します。お楽しみに!

このブログが皆さんのお役に立てば幸いです。ご意見、ご質問などがありましたら、こちらのお問合せページからお願いいたします。

 

 

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