TCFDシンポジウムで聴いたGPIF高橋理事長の講演

先日(2月12日)、「TCFDを巡る企業と投資家の対話:今後の展望」というシンポジウムに行ってきました。

シンポジウムの主催者が、金融庁と日本取引所グループ(JPX)で、タイトルにも「投資」という言葉が入っているので、何かしら投資に関連したトピックだろうと参加の申し込みをしたのですが、それまで「TCFD」という言葉は、全く知りませんでした。

TCFDとは、「Task Force on Climate-related Financial Disclosures」の略で、日本語では「気候関連財務情報開示タスクフォース」と呼ばれているものです。

名前から想像できると思いますが、地球温暖化などの気候変動が企業に及ぼす財務的影響を開示することによって、企業とその投資家がこの問題についての対話を深め、問題解決に向けた動きを促進することを目的とするもののようです。詳しくは、下のリンクのペーパーをご参照ください。

関連リンク:Recommendations of the Task Force on Climate-related Finanncial Disclosures(日本語訳)

ESG投資やSDGs(持続可能な開発目標)と同じようなものだと思いますが、気候変動という、超長期の時間軸で、地球全体に重大な影響を及ぼすリスクを有する課題を括り出して、その解決に取り組んでいこうということでしょうか。

さて、今回のブログでは、TCFDについてこれ以上深く掘り下げるつもりはなく、シンポジウムで講演をされたGPIFの高橋理事長のお話についてちょっと触れたいと思います。

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、ご存知の通り公的年金の積立金の運用をしている機関で、超長期の投資家としてESG投資を始めており、昨年12月にTCDFへの賛同を表明したということです。

私は、高橋理事長のお話を生で聴くのは初めてで、見かけは几帳面でまじめな感じがしていましたが、講演ではズバッと本音でお話されている印象で面白かったです。

中でも興味深かったのは、TCFDと直接関係ないのですが、年金財政における積立金の役割について下のスライドを使って説明されていたところです。

高橋理事長は、「私の両親も勘違いしているのですが、公的年金は、皆さんの保険料を貯金のように貯めて将来お支払いするという制度ではありません。年金給付の9割は、保険料と国庫負担で賄われており、積立金は残りの1割程度を負担しているに過ぎないのです」というようなお話をされていました。

少し前に、GPIFの2018年10月-12月期の運用状況が公表され、14.8兆円の損失だったことが報道されていました。さすがに、1四半期の運用成績だけで年金制度の不安を煽るような報道はなかったようですが、上のような積立金の役割についても広く理解してもらえるように、これからは、運用状況の報道とペアで取り上げて欲しいところです。

また、シンポジウムの会場にいた500人余りの参加者の皆さんにも、このことが広く知れ渡り、会社に戻ってから、「GPIFの高橋理事長が言っていたけど、年金の積立金って、給付の1割位しか寄与していないんだって」と、同僚に話してもらえればいいな、と思いました。

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