仮想通貨に関する日米新聞記事比較

ビットコインなど仮想通貨に関する記事の内容が、日米の新聞で対照的でおもしろいので、紹介します。

まずは、米国のWall Street Journal(WSJ)より2つ。

個人投資家はビットコインに投資するべきか?-ひと言でいえば「No」である

Should individuals invest in bitcoin? Advisers say no.
https://www.wsj.com/articles/should-individuals-invest-in-bitcoin-in-a-word-no-1507730402

ビットコインバブルが重要な意味を持つ理由

A bitcoin crash might affect more than just the digital geeks
https://www.wsj.com/articles/why-bitcoins-bubble-matters-1507515361

WSJの記事は英語なのでななめ読みですが、ポイントをまとめると以下の通りです。

  • 1番目の記事では見出しの通り、ビットコインにお金を投ずることはすべきでないと言っています。今後価格はまだ上昇するかもしれないが、価格変動リスクが大きすぎるということです。
  • また、中国、韓国がすでにそうしたように、政府が何らかの規制をかける可能性もあります。これは、仮想通貨の匿名性のためにマネーロンダリングに利用される恐れがあるからです。また、ハッカーなどによって自分のビットコインが盗まれてしまうリスクもあるでしょう。
  • 価値が変動するものを「通貨」としては使えない。← 至極当然だと思います
  • そういう中、日本の金融庁は仮想通貨の登録取引業者の認定を始めていることを伝えています。← 米当局が慎重なスタンスであるのに対して、日本はやや前のめり的な状況でしょうか。新しい技術の芽を摘まないようにという配慮とか、FinTechで他国を先んじようという意図があるのかもしれませんが、ちょっと心配です。
  • 2番目の記事は、見出しからしてビットコインはバブルと明言しています。そして、自分はそんな投機的な取引はやっていないので、バブルが崩壊しても問題ないと考えている人も、ビットコインバブルの崩壊が経済全体に影響を及ぼす可能性があることには注意した方が良い、と警鐘を鳴らしています。
  • 例えば、ビットコインに必要なテクノロジーを提供しているNvidiaやAMDといった半導体メーカーの業績や株価に影響します。また、ビットコインに連動するETFを上場しようという動きがあるが、もし実現すると、これまでは自らの投資ルールによる制限のため指をくわえて見ていた機関投資家もビットコインに参入することができ、それがバブルの崩壊とともに金融危機を招く可能性があるということです。

 

さて、WSJのビットコインに警鐘を鳴らす記事に対して、日本経済新聞の方はどうでしょう?ビットコインの投機性よりも、これを日常の買い物とかの決済に使用できる点に焦点を当てた記事が多いようです。

ビットコインで1週間生活してみた 手数料には仰天 : NIKKEI STYLE https://style.nikkei.com/article/DGXMZO22078420Q7A011C1000000?channel=DF051020173088

ビットコイン使ってみた 決済はスマホかざすだけ:日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO21887050U7A001C1SHA000/

ビットコイン、VISAに入金 取引所ビットフライヤー:日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO21942100V01C17A0EE9000/

仮想通貨、まだ「通貨」と認められぬが 渡辺元財務官 : NIKKEI STYLE https://style.nikkei.com/article/DGXLASFL20H29_Q7A920C1000000?channel=DF150620172611

  • 1番目と2番目の記事は、「実際にビットコインを使って買い物してみました」というワイドショー的な突撃レポートです。3番目の記事は、「ビットコインによる買い物が身近になってきた」という文で始まっていますが、価値が変動するものを日常の買い物に使えるのでしょうか。それとも、これらの記事はビットコインで得た利益で買い物をしようと言っているのでしょうか。だとすると、WSJの記事とは対照的に、ビットコインによる投機を勧めているように感じます。
  • また、仮にビットコインの価格が全く動かなかったとしても、外貨と同じようにビットコインを買う時のレートと買い物するために円に戻すときのレートは3~4%異なるので、その分損をしてしまいます。そして、それはビットコイン業者の利益になる訳です。結局1~3番目の記事は、ビットコイン業者の宣伝としか思えません。
  • 4番目の記事は、ビットコインの問題を指摘しているもので、かろうじて「経済新聞」としての体面を保ったと言えるでしょうか。

ビットコインに関する記事を比べると、WSJと日経では差があるなぁと感じます。FPの仕事をしていると、「日本人の金融リテラシーは米国人に劣っている」ということをしばしば耳にします。私はそんなことは無いと思っていますが、もし、あるとするならば、この新聞記事の差が一つの表れではないかと感じました。

 

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