つみたてNISA対象のアクティブ型投信をみる

つみたてNISAの対象となる投資信託が金融庁より発表されました。

今日はその中で、日本株のアクティブ型投信について見てみたいと思います。

対象ファンドとなったのは、以下の7銘柄です。あと、下馬評では対象に入ると思われていた、さわかみ投信ですが、最終的には会社の方針で対象に入るための届け出を見送りました。ただ、日本株のアクティブ型投信を語る上では欠かせない投信なので、今回の比較には含めてみました。

つみたてNISA対象ファンド(カッコ内は運用会社)

  • コモンズ30ファンド(コモンズ投信)
  • 大和住銀DC国内株式ファンド(大和住銀投信投資顧問)
  • 年金積立 Jグロース(日興アセットマネジメント)
  • ニッセイ日本株ファンド(ニッセイアセットマネジメント)
  • ひふみ投信(レオス・キャピタルワークス)
  • ひふみプラス(レオス・キャピタルワークス)
  • 結い2101(鎌倉投信)

1.リターンはひふみ投信が圧倒

何はともあれまずはリターンの実績を比較してみましょう。比較にあたっては、インデックス型のリターンと比較するためにTOPIXに連動する投資信託を含めました。

ファンド名称 リターン1年(%) リターン3年(%) リターン5年(%)
コモンズ30 26.82 11.75 19.06
大和住銀DC国内株式 32.75 9.16 19.40
Jグロース 32.40 13.12 25.17
ニッセイ日本株 29.15 10.03 19.10
ひふみ投信/プラス 37.68 19.80 27.52
結い2101 14.70 6.60 11.98
さわかみ投信 28.40 9.25 20.45
TOPIX連動型投信 29.09 10.17 20.04

(注:リターンは年率。データは2017年年9月末時点のものでMorningStar社のサイトより入手)

1年、3年、5年のいずれの期間においてもインデックス型を上回っている(緑色の部分)のは、Jグロースとひふみ投信です。特に、ひふみ投信の成績は群を抜いており、素晴らしいの一語です。一方、他のアクティブ型はおおむねインデックス型と同じ程度のリターンとなっています(結い2101は例外的に低くなっています、これについては後段で触れます)。よく言われているとおり、アクティブ型とは言っても市場平均(インデックス型)のリターンを上回ることは、簡単ではなさそうです。しかし、だからと言ってインデックス型のリターンを上回らないアクティブ型は意味がないとは思いません(理由は後段で述べます)。

 

2.リターンだけでは測れないアクティブ型の価値

では、リターン以外のデータを見てみましょう。ここでは、各投資信託の運用開始日、売買高比率、株式組入比率を見てみます。

ファンド名称 運用開始日 売買高比率 株式組入比率(%)
コモンズ30  2009年1月19日  0.96  79.3-98.7
大和住銀DC国内株式  2006年10月23日  1.72  98.4-99.6
Jグロース  2001年10月31日  1.20  97.1-98.7
ニッセイ日本株  2001年12月26日  0.99  95.3-96.9
ひふみ投信/プラス  2008年10月1日  1.94  88.2-97.3
結い2101  2010年3月29日  0.43  57.0-62.0
さわかみ投信  1999年8月24日  0.09  85.5-99.8
TOPIX連動型投信 —–  0.16  100

(注:データは各投信の直近期末の運用報告書より入手)

(1) 運用開始日

これは、各投信が100年に一度の暴落と言われたリーマンショック時に運用されていたかを確認する目的です。当時の下落率を比較したものが下の表です。

ファンド名 大和住銀 Jグロース ニッセイ さわかみ TOPIX
リーマンショック時下落率 -57.5% -60.6% -55.9% -54.6% -56.2%

(注:下落率は2007年6月~2009年2月の期間におけるもの)

どの投信の下落率もすさまじいもので、これらに優劣をつけることはあまり意味がないかもしれません。それよりも、これだけの下落率を経験した投信は、これを教訓として、将来万一同じような暴落が起きた場合の運用に生かせるのではないでしょうか。

(2) 売買高比率

売買高比率とは、下の数式で計算される数値です。

 

 

 

簡単に説明すると、運用額に対してどの位売買を行っているかを表すもので、数値が大きければ、より頻繁に銘柄の入れ替えや組み入れ比率の変更を行っている傾向があると推測することができます。

数値が一番高いのは、ひふみ投信です。ひふみ投信は、月次の運用報告書を見てわかる通り、組入上位の銘柄が結構入れ替わっています。理由の一つは、銘柄の選定をある程度相場の流れも考慮して行っているためと思われます。

一方、数値が一番低いのは、さわかみ投信です。これは、一度投資した企業とはじっくりとつきあっていくという、さわかみ投信のスタンスの表れであると思います。でも、インデックス型よりも低いのは、おどろきですね。

(3) 株式組入比率

今回取り上げた投信は、株式投信と分類されるものですが、運用資金のすべてを株式に投じているわけではありません。それぞれの運用方針に従って、一定割合を現金として保有することがあります。

ここで目立つのが、結い2101の比率が他と比べてかなり低いことです。理由は、当ファンドの運用方針として、リスク(変動率)を市場平均の半分程度(10%程度)に抑えることになっているからです。リスクを抑えれば、リターンもそれに応じて低くなります。ただ、リターンはインデックス(TOPIX)の5~6割程度は確保できており、そんなに悪くないと思います。

また、さわかみ投信はここ3年間程は、株価が大きく下げた場合に割安となった株を買うことができるように、組入比率を85%程度に抑えてきました。このように、万一の暴落に備えたバッファーを保持しつつ、インデックスと同水準のリターンを得ることができたのは、やはり悪くないと思います。

 

3.アクティブ型投信を選ぶ基準は?

アクティブ型投信をいろんな角度から比較をしてきましたが、では、どの投信を選べば良いのでしょうか。世の中では、やはりリターンに着目して、インデックスを上回らないアクティブは検討に値しないという見方が多いようです。しかし、アクティブ型投信の評価は、リターンの大小や、それがインデックスを上回っているか否かだけで決まるものではないと思います。

何より大事なのは、各投信の運用哲学ではないでしょうか。

なんか青臭いと言われそうですが、まずは運用会社の社長や運用担当者がどのような哲学や理念に基づいて投資を行っているかを理解し、それに共感できた時に、皆さんはその投信を購入すれば良いと思います。そうすれば、仮にリーマンショックのような暴落が再び起きて、投信の価格が大きく下がるようなことがあっても、迷うことなく投資を続けることができるでしょう。

もちろん、より高いリターンをとことん追求するという投資哲学もありだと思いますが、儲かれば何でも良い(もちろん合法的にですが)ということを突き詰めると、その手段は株式(投信)である必要はなく、競馬のようなギャンブルでも構わないということになるのではないでしょうか。

今回紹介したアクティブ型投信の中には、セミナーや勉強会を開催して、運用会社の方針を皆さんに知ってもらうための活動を積極的にやっているところが多くあります。皆さんも、そのような場に足を運んで、運用会社の方の生の声を聞いてた上で、投信を選んだらいかがでしょうか。

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